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「デジタル絵本よみきかせ」実証実験の報告書


電書ラボでは、大日本印刷hontoビジネス本部、図書館流通センターと共同で、デジタル絵本をプロジェクターや大型テレビをで、子どもたちに、よみきかせをする実験をしました。
この経過を一冊の報告書にまとめたので、公開します。

「デジタル絵本よみきかせ」実証実験報告書PDF(1.2M)
●目次────────────────────────────────────────
図書館・幼稚園での読み聞かせ用途のデジタル絵本配信の総括………02
電子絵本読み聞かせ実験 アンケート………05
●図書館でのアンケート(利用者)
●図書館でのアンケート(図書館スタッフ)
●幼稚園でのアンケート(幼稚園スタッフ)
電子絵本読み聞かせ実験記録(図書館)………09
苫小牧市立中央図書館(北海道)
札幌市中央図書館(北海道)
府中市立図書館(広島県)
江戸川区立西葛西図書館(東京都)
江戸川区立中央図書館(東京都)
練馬区立貫井図書館(東京都)
電子絵本読み聞かせ実験記録(幼稚園)………15
道塚幼稚園 東京大田区
光明幼稚園 東京大田区
育成幼稚園 東京世田谷区
こうま幼稚園 東京板橋区
電子絵本読み聞かせ実験記録(タイトル提供出版社)………17
モーニング
岩崎書店
資料
●電子絵本読み聞かせ候補リスト………19
●企画書………21
●幼稚園への依頼書………27
●総括部分────────────────────────────────────────
図書館・幼稚園での読み聞かせ用途の
デジタル絵本配信の総括

はじめに
近年、図書館など公共性の高い施設での電子書籍の利用が始まりつつある。
いわゆる電子図書館と呼ばれるような仕組みやサービスであるが、従来の紙の本とは異なり、然るべき電子化や閲覧に際しての権利処理(許諾)が必要となっている。出版社や著作権者が広範な利用に意義を認め理解を示してくれるケースは広がりつつあるが、一般的に風合いや質感、版型など重視すると言われる絵本について、なかなか許諾が進まないという実態がある。

他方、図書館などの現場では子どもたちに人気があり繰り返し読まれるこれらのジャンルの本は、電子化されることで簡便に利用可能となることについて高い潜在ニーズを有している。

そういった現状を踏まえ、今回の実証実験ではデジタル絵本の利活用の可能性について検証できるような情報を収集すべく、デジタル絵本を読み聞かせ用途で利用するという側面に絞って実験を繰り返した。
図書館や幼稚園での読み聞かせは日常的に行われるメニューであり、子どもの反応がダイレクトにわかるだけでなく読み手の負荷も抑えることができる。そのような条件下であれば、従来の紙の絵本に加えデジタル絵本を利用することの効果や課題などを浮かび上がらせやすいと考えた。

実験をするに当たってはいくつかの目的について検討した。デジタル絵本が読み聞かせ等の用途で提供される場合の有償利用の可能性、図書館での利用が活性化することによる出版業界との連携強化、一般的な電子図書館(非来館利用者による自宅からの利用など)とは異なる独立サービスとして成立可否、などである。
もちろん同時にデジタル絵本というものへの子どもたちの直接的な反応なども確認事項とした。

もうひとつ重要だったのは、上述のように電子化や図書館配信に難色が示されるコンテンツへ焦点を当てているため、実験は可能性の確認にとどめ有期限での実施とすること、実験後のビジネス立案などと今回のコンテンツ参加とは切り分けて考えること、を出版社等へ事前に案内した。
本書では、プロジェクトメンバー自らがデジタル絵本を読み聞かせることを通じて、実際の読み手の反応や読み聞かせが求められる現場の実情、そこにコンテンツを投入する出版社の立場等々を広く勘案した実験結果について報告する。

実験概要
電子図書館と呼ばれる、クラウド環境へデジタル絵本データを格納してインターネット経由で任意の絵本(コンテンツ)を閲覧する仕組みを利用した。
今回の実験では、絵本の有効な活用シーンのひとつである「読み聞かせ」について、図書館と幼稚園を実施環境に選定して実験を行った。
必要な設備も最小限に抑えるよう工夫をし、①インターネット環境、②PCやタブレットなど、③スクリーン及びプロジェクター、で実施可能なよう配慮した。
実験には、当該Webサイトのアクセスが可能なIDとパスワードを限定的に配布することで、図書館や幼稚園の現場で、主に読み聞かせの主宰者側が自由にコンテンツを利用できるようにした。

また、必要な設備が用意できないところには、上述の設備にそれぞれ
①ポケットWi-Fi、 ②iPad、 ③プロジェクター、
を一式貸し出すようにした。スクリーンについては、実施環境の中で好適な居室内壁面などを活用した。

今回は上記の背景から、いわゆるデジタル絵本として広く提供されるようなアプリ形式のものやデータがダウンロードできるようなものについては使用しなかった。これらは本件「読み聞かせ」の目的以外にも利活用の可能性があり、本実証には含めず調査範囲からは除外した。

コンテンツについては、最終的に以下3パターンに大別できた。
ひとつめは、単純に紙から電子への置き換えであり、版面レイアウトそのままに例えばPDFのようなかたちで電子化を行った。しかし、対象が絵本であることもあって見開きの部分は絵柄など滑らかに整えるといった微調整を行っている。

ふたつめは、そのような絵本の素材を一部分解し、動きのある効果を付与したり、BGMや効果音を合わせたりして電子化したものである。これは自動的に再生されるが、実際の読み聞かせについては人間の肉声で読むことを行った。

最後のみっつめは、ふたつめのような動きをつけたコンテンツに対し、さらに朗読の音声まで付与することで、全てが自動再生可能なように作りこんだものである。これは完全にはじめからおわりまで「鑑賞」するタイプのものだが、単純なアニメやゲームのようなものとは異なり、動きを限定的にし絵本の良さを殺さないつくりに腐心したものである。

記録やアンケートから見えてきたこと
●デジタル絵本に紙の絵本の置き換えは可能
絵本の読み聞かせ用途、という部分を見たとき、紙の絵本の置き換えとしてデジタル絵本は充分に役割を果たす。
紙の風合いや子どもたちとのやりとり、といったことはよく言われてきたが、その紙の絵本の良さがデジタル絵本になって減衰したかというとそうではなかった。
紙の絵本やデジタル絵本を組合せた回が幾度かあったが、子どもたちの絵本や読み聞かせに対する集中はほとんど変わらなかった。むしろ動きがあったデジタル絵本などはその動きに合わせて反応があるなどして、デジタルならではの面白さもかいま見えた。
デジタル絵本が紙の絵本よりも優れていると言うこともないが、その逆もまた無いのではないか、というところが見えたとも思う。

いくつか現場の声を拾うと、人間が読み聞かせるときはおとなしく聞いているものだが、自動再生のものでは子どもたちが画面に対して話しかけるなどしていて、読み手として新鮮に感じたなどの意見があった。
デジタルといえど人間が話すことで子どもたちとのやり取りが生じるのは普遍的なものだろう。

今回、特に幼稚園を中心にこのようなサービスのニーズについて確認ができた。
図書館でもモデル次第で充分に受け入れられるだろう絵本ニーズの高さである。
今回のようなストリーミング配信型であれば1回あたりの利用コスト、つまり料金体系的な部分も比較的抑えられるのではないか、という手ごたえを持ち、紙の本ではできなかった部分をデジタル絵本が担うことは充分に期待できる。

●大きく映し出すことは有効、その選択肢の課題は紙も電子も同じ
大きく映し出すことで読み手、特に子どもたちの満足度や興奮が最大化したことは実験を通じた共通の結果であった。しかしこのことは紙の絵本の頃から、大型絵本や拡大複写の掲示などで実施してきたことでもある。その頃の課題は、必要な絵本が大型化されていないとか、拡大複写に手間がかかるといった主旨のものが多く、要するにコンテンツの種類が足りないということであった。

デジタル絵本がその課題を克服しているかといえば難しく、未だ充分なコンテンツが供給されているとは言いがたい。選択肢が少ない、と言い切っても良い状況である。

しかし紙の絵本に比べ、デジタル絵本は一度配信できるようになれば、必要な利用制限はあったとしても簡便に広範囲への配信が可能になるというメリットがある。そして昨今の設備の充実(廉価なPCやタブレット、プロジェクターといった必要な機材、普及した無線インターネット環境と充分な帯域)もあって、それぞれの現場が大写しできる環境は整ってきたと言える。

改めて大型絵本と比較すれば、紙の大型絵本の発行点数は限られ(むしろ少ない)、高価であり、実際に購入したとしても維持・運搬にさらにコストが生じる。この部分をデジタル絵本が補うことができるという事実は重要である。

一方で今回の実験で準備したコンテンツについて、もっと選択肢の課題が表出すると想定していたが、思いの外そこは問題にならなかった。
図書館も幼稚園も、用意された範囲で上手にやりくりを行い従来の読み聞かせに適応させていた。このことから、コンテンツの選択肢を充実させるより、まず使ってもらえるようにする、というところに本件の読み聞かせの取り組みにおけるニーズが確認できたといえる。

●デジタル絵本だからものすごく作りこまれている必要はない
デジタル絵本の種類には、版面をそのままデジタル化したもの、デジタル化の際に絵を構成する部品を分解して動きをつけたり、その動きに効果音やBGMを足したもの、さらにナレーションや読み上げなどを付加して全てが自動再生で完結するようなもの、といった区分が可能である。
これらのバリエーションを試す回も行ってきたが、そこでわかったのはデジタル絵本が必ずしも高度な電子化、ギミックなどを盛りこまなくても満足度は高い、ということである。

上述のバリエーションによる見え方の違いは確かにあるが、それによって反応や評判が大きく異なるかといえばそうではなく、当たり前のようだがコンテンツの持つ内容の面白さ、興味深さがそのまま子どもたちの反応に繋がっている、という印象を受けた。
逆にあまり作りこまれすぎていると、親御さんの方からアニメのようだとか絵本の良さが失われている感じ、黙って与えておくと良くない気がする、といった感想が得られた。
この指摘は重要であり、絵本が絵本として読み手の考えたり感じたりする時間を大切にするのであれば、それはテレビ番組やアニメーションのようなコンテンツとは異なるべきであり、そのことを明示的に理解できる検証結果だったといえる。

総じて「自分が読むのがいちばん良い」という意見があり、要するにストーリーの進行を自身で制御できるものが望ましいということのようだった。
逆に言えば、音楽が流れるなどして自由に止めたり再開したりできないのは読むのが難しい。シンプルなもの、つまり単純に電子化されていて大写しできるものが最も読み手の自由度が高く好まれるということだった。
ただしBGMは欲しいとか動きも欲しいといった背反する要求も高いため、今後も試行錯誤の必要はあろう。
また、それらの効果(エフェクト)のタイミングは難しく、効果音程度であれば比較的対応しやすいようにも思える。
また実演に際し、図書館や幼稚園における利用を通じて現行の著作権法上の記載や紙の著作物での慣例などでは取り扱いきれない事象が改めて確認できた。各事項については再整理が必要であるとわかった。

●ITインフラの問題
幼稚園のインフラは図書館と比較しても整っていなかった。インターネットへの接続すら一般的ではない。
ゆえにWi-Fiへの接続など、そもそも難しい印象を受けた。従って今回、機材一式で貸出したことは結果的に現場の助けとなったし、PCよりもiPadなどのタブレットを選んだことで、現場の取り回しも簡単であるというような印象を与えることは工夫として良かったと思われる。


公開日:
最終更新日:2016/12/18

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